健康コラム

掲載日:

診療ウォッチング 骨粗鬆症予防

汐田総合病院 総合診療科 小林 靖 医師

~骨密度測定とFRAXを組み合わせた評価で~

 

介護予防の骨粗鬆症診断
 骨粗鬆症は骨がスカスカになり、ちょっとした転倒でも骨折しやすくなる病気です。日本では高齢者の大腿骨や背骨の骨折が大きな問題となり、寝たきりや介護が必要になる原因のひとつとされています。そのため骨の強さを正しく評価し、将来の骨折を予防することがとても大切です。

 

骨粗鬆症の検査方法
 骨の強さを調べる代表的な方法が「骨密度測定(DXA)」です。これは腰骨や足の付け根の骨の密度をX線で測る検査で、骨の量を数値化できます。結果は「Tスコア」という形で表され、マイナス2・5以下なら骨粗鬆症と診断されます。この基準に該当した方は、基本的に薬による治療が必要になります。
 一方で、「FRAX(フラックス)」という評価ツールも活用されます。FRAXは、年齢や体格、生活習慣、病気の有無、骨折歴などの情報を入力すると、今後10年間に骨折する確率をパーセントで示してくれます。日本版FRAXは、日本人のデータをもとに作られているため、私たちの実際のリスクに近い値が出ます。

 

 

2つの評価を組み合わせて
 実際の診療では、このふたつを組み合わせて使います。まず骨密度を測定し、Tスコアが基準以下なら骨粗鬆症と診断され、治療対象となります。骨密度がまだ骨粗鬆症の基準に達していなくても、FRAXで「将来の骨折リスクが高い」と判定された場合には、早めに治療を始めることが勧められます。例えば70歳の女性でTスコアがマイナス2・2と「骨量減少」の状態でも、FRAXで大腿骨骨折のリスクが5%を超えていれば、薬を使った治療が推奨されます。

 

早目の対策で元気な高齢期を
 このように、DXAは「現在の骨の強さ」を、FRAXは「将来の骨折リスク」を教えてくれる道具です。両方をうまく組み合わせることで、見落としを防ぎ、一人ひとりに合った予防や治療ができます。高齢期を元気に過ごすために、骨折リスクの早めの評価と対策を心がけましょう。

 

健康コラムの一覧へ