院長あいさつ

image

汐田総合病院 院長 宮澤 由美

miyazawa

 汐田総合病院の歴史は1953年に「働く者の医療機関」としてスタートした旧汐田診療所まで遡りますが、1960年の病院化、1987年の総合病院化、2001年の新築移転を経て、団塊の世代が後期高齢者になる2025年を迎えようとしています。横浜市鶴見区も京浜工業地帯の街から、高齢者や障害者、外国人な>ど多様な人が多様な価値観をもって暮らす街へと変わってきました。 

 全国的には人口減が進む中、首都圏の当院を取り巻く環境はまだ緩やかな人口微増が続き、中でも高齢人口の大幅な増加とともに更なる医療需要・介護需要が見込まれる地域です。その中で中核病院をはじめとする近隣の医療機関との機能分化と連携を深め、無料低額診療事業を核として、無差別・平等の地域包括ケアの拠点となるような病院を目指します。さらに、当院の目指すべき方向性として、「高機能ケアミックス病院」から「地域生活支援病院」への転換を図ります。「地域生活支援病院」とは一定の急性期・救急機能を備えながらも、回復期病床が充実した、地域住民の生活を医療を通して支援することに重点をおく病院です。差額ベッド料がなく、経済的要因で差別をせず、社会的弱者に寄り添う、無料低額診療施設としての社会的使命を果たすことは開院以来、守り通してきた理念です。理念を守りつつ、時代の変化に柔軟に対応できる医療機関でありたいと思っています。

病院経営と地域医療を守る年が始まりました。(2025年5月12日) 

 2025年度が始まりました。2025年は多くの医療・介護関係者が大きな転機点としてきた年でした。団塊の世代が後期高齢者になり、日本の超高齢社会が熟する年として、行政機関も「地域包括ケア」の整備を2025年までには行うと医療計画や介護計画を作ってきました。国民皆保険制度を守り、介護保険制度も創り、何とか2025年を迎えることができましたが、医療機関にとっては大変厳しい幕開けとなりました。介護や障害とともにトリプル改訂となった2024年診療報酬改定は医療費抑制政策の影響が強く、多くの医療機関の収益があがらないことになりました。一方で賃上げや物価高の影響で費用は増加し、差し引きの経常利益はマイナスとならざるを得ないことになっています。病院か診療所かや病院の病床規模を問わず、この傾向は顕著で、国立大学病院長会議や日本医師会、日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会・日本慢性期医療協会・全国自治体病院協議会の6団体合同などでの調査結果や経営改善を求める声明などが出されています。このままでは経営難を理由に廃業せざるを得ない医療機関がでて、地域に必要な医療提供ができなくなることが危惧されます。
 地域住民が病気になっても、医療機関が身近にないので、医療を受けられないという事態は果たして、多くの住民が納得できることなのでしょうか?とりわけ団塊の世代はこれまで日本の高度経済成長を支え、懸命に生きてきた人たちです、後期高齢者になり、これから人生の終わりに向かっていく先輩たちに、十分な医療や介護が受けられないかもしれない不安を与えていいものでしょうか?
 当院も2024年度の経営状況はけして楽観を許すものではありませんので、2025年度はこれまでにもまして、自らの経営努力を重ねると同時に、国や県にも診療報酬制度の期中改定や医療機関に対する支援をより充実してもらえるような働きかけを強めていきます。自院の経営改善や経営を守ることこそが地域への適切な医療提供につながり、地域を守ることにつながります。地域住民の皆さんのご協力・ご支援をよろしくお願いします。