健康コラム
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~特発性正常圧水頭症 治療可能な認知症~
汐田総合病院 初期研修医 磯田 匡尊 医師
汐田総合病院初期研修医の磯田匡尊(いそだ・まさたか)です。今回は治療可能な認知症の代表格でもある特発性正常圧水頭症についてお話しします。

iNPH.jpホームページより
水頭症とは
水頭症とは脳や脊髄を循環している脳脊髄液の流通や吸収が悪くなることで頭蓋内に溜まり、脳室の拡大が認められる病気です。
いわゆる〝頭に水が溜まる〟状態で、頭のCTやMRI検査で確認できます。60歳以上の方ではっきりした原因が無いのにも関わらず脳脊髄液が溜まることがあり、特発性正常圧水頭症と呼ばれます。
一方、出血や脳腫瘍などで脳脊髄液の循環が阻害されることで溜まることがあり、続発性正常圧水頭症と呼ばれます。
特発性正常圧水頭症
特発性正常圧水頭症は60歳以上の方で発症し、症状としては以下の3つが代表的で、診断に有用です。
①歩行障害、ふらつきや小刻み歩行など。
②認知症、認知機能低下や元気がない、怒りっぽいなど。
③尿失禁、尿の回数が多くなった、トイレまで間に合わないなど。
手術が必要かを判断
治療は〝頭の過剰な水を抜く〟ことで手術が必要となりますが、人によって治療効果は様々です。そのため、まずは手術適応があるか判断するために水を抜くことによる症状の改善を確かめます。方法としては脳脊髄液排除試験やtap‐testがあり、いずれも腰から針を刺し脳脊髄液を排除します。脳脊髄液の排除で歩行や認知機能の改善を認め希望がある場合は手術を検討していきます。

脳脊髄液排除試験
1度は頭の画像検査を
診療の現場ではご家族から、歩行がおかしい、認知症のような症状が出てきたと指摘され、頭の画像検査をしたところ水頭症を疑うというケースが見られます。一般的には歩行障害が最も出やすいですが、認知機能低下のみを認めるケースもあり、この場合は加齢による認知症として見過ごされることが多いです。
水頭症による認知機能低下は適切な対応で改善を見込めるので、もしも高齢の家族や知人で認知症のような症状が出現した際は加齢によるものと決めつけず、一度頭の画像検査を受けることを勧めてください。