健康コラム

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心不全について

汐田総合病院 内科専攻医 沼尻 嵩生 医師

心不全とは

 心不全とは、心臓の構造的・機能的な異常によって身体の中に水が溜まり、臓器障害が起こり、呼吸困難、浮腫、倦怠感などの症状をきたす状態のことをいいます。症状や身体所見、BNP、NT―proBNPなどの血液検査の結果から総合的に診断を行います。

 

 

心不全の症状

 心不全の症状は身体に水が溜まるうっ血による症状と、心臓から送り出される血液量の低下=低心拍出による症状に分かれます。
 うっ血による症状としては、呼吸困難、息切れ、頻呼吸、痰がらみ、起坐呼吸(横になると苦しく、座っていると楽)、むくみなどがあります。低心拍出による症状としては、意識障害、冷や汗、倦怠感、低血圧、身の置き所がない様子などがあります。むくみや息切れ、痰がらみは心不全を連想しやすいですが、実はむくみがない心不全があることにも注意が必要です。

 

心不全の原因

 心不全の原因は非常に多岐にわたります。心筋梗塞や狭心症、心臓弁膜症、不整脈、心筋症、高血圧など心臓に直接かかわる原因だけではなく、感染症、妊娠、甲状腺機能異常、糖尿病などによっても引き起こされることがあります。そのため心不全と診断するだけではなく、心不全の原因を突き止め、原因に対しても治療することが重要です。

 

心不全の分類

 心臓は上下左右の4つの部屋に分かれており、中でも左下の部屋である左室が最も重要です。左室が収縮することで心臓はポンプの役割を果たし、大動脈を通じて、脳や全身の臓器に血液を送っています。この左室の機能、どれくらい左室が動いているかで心不全を分類することが一般的です。
 左室機能は55%以上が正常とされており、左室機能が50%以上、40~49%、40%未満の3つに分類されます。

 

心不全の治療

 心不全の原因によって治療が異なるため、原因検索が重要です。心筋梗塞や狭心症が原因であれば心臓カテーテル治療や冠動脈バイパス術、不整脈が原因であれば薬剤調整やカテーテルアブレーションの治療が検討されます。
 薬物治療は前項で記載した左室機能によって治療薬が異なりますが、左室機能が40%未満では①β遮断薬、②ARNI(もしくはACE阻害薬)、③ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、④SGLT2阻害薬の4つの薬が推奨されています。ただし他の病気を合併している場合や全身状態によっては治療が異なることもあり注意が必要です。

 

まとめ

 最も重要なのは予防です。高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病はあらゆる病気の原因であり、心不全の原因にもなります。そのため塩分制限を中心とした食事を心がけながら、必要に応じて内服治療をかかりつけ医と相談していくのがよいでしょう。むくみや息切れなど心不全を疑う症状でお困りのことがあれば、気軽に当院総合診療科に相談ください。

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