健康コラム

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細菌に注意 ~食中毒の予防と対策~

汐田総合病院 初期研修医久留島 進

 厚生労働省の2019年度の統計では、1万3018人の食中毒患者が確認され、そのうち3人が死亡しています。食中毒は年間を通じて対策が必要ですので、注意点や対処法を紹介します。

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年間を通して注意が必要

 2019年度は、食中毒患者の半分近くがノロウイルスによるもので、その流行期は11月から3月の主に冬場です。有毒植物や毒キノコなどの自然毒による食中毒は春や秋に注意が必要です。

 暑い時期に注意が必要なのは細菌による食中毒で、細菌は温度・水分・栄養という3つの条件がそろうと瞬く間に増殖します。食中毒は、飲食店や小売店だけでなく、家庭での食事でも起こります。

 細菌性食中毒の予防3原則は「つけないこと」、「増やさないこと」、「殺菌すること」です。

食中毒の症状

 どんなに予防しても、食中毒は誰にでも起こり得る病気です。食中毒になってしまったら、どのような症状が出るのでしょうか。

 最も一般的な4つの症状は「吐き気や嘔吐、腹痛、下痢、発熱」です。下痢は水よう便の場合もあれば血が混じる場合もあります。

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 これらの症状は、原因となる食品を食べてから数時間後に現れる場合もあれば数日後まで現れない場合もあり、原因となる微生物の潜伏期間によって様々です。下痢や嘔吐などの症状が続くと体から水分が失われ、脱水によるめまいや倦怠感、意識障害、尿量の減少といった症状が現れます。

 特に子どもや高齢者は急速に体液を喪失しやすいため注意が必要です。原因となる微生物によっては、まれに腎不全や髄膜炎などの重大な合併症が現れる場合があります。

症状が長引く場合は医師に相談を

 治療の基本は、経口補水液などで十分に水分を摂取し、消化のしやすい低脂肪の食事をとり、休息することです。水分や食事の摂取は少しずつこまめに行いましょう。

 必ずしも受診する必要はなく、ほとんどの食中毒は抗生物質など特別な治療を要しません。ただし、高齢者や幼児は別です。

 症状が持続したり、嘔吐物や便に血が混じる、38・5℃を超える高熱がある、脱水による症状がある、水分摂取ができないなどの場合は、重症化や合併症の恐れもあるため医師に相談することをおすすめします。

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