健康コラム

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糖尿病とサルコペニア

汐田総合病院 総合診療科 阿部 眞理子 医師

 

 汐田総合病院総合診療科、阿部眞理子と申します。今回は、高齢者で問題となることが多いサルコペニアと糖尿病について、お話をしたいと思います。

 

サルコペニアとは

 皆さんは「サルコペニア」という言葉を聞いたことがありますか?サルコペニアは、加齢によって筋肉量が減少し、筋力や活動能力が低下した状態のことをいいます。サルコペニアがあると病気にかかりやすくなり、寿命の短縮に繋がるといわれています。

 

糖尿病の方の場合は

 最近では、糖尿病をもつ方は加齢に伴って筋肉量が減少しやすいこと、すなわちサルコペニアになりやすいことが分かってきました。筋肉は、運動時にエネルギー源としてブドウ糖を利用しますが、筋肉量が減少するとブドウ糖を効率よく消費できなくなり、その結果、血糖値が上昇して糖尿病の悪化をきたしてしまいます。つまり筋肉量を維持することは、糖尿病治療においても、健康寿命を延ばすことにおいても、大変重要です。
 糖尿病がサルコペニアを引き起こすメカニズムとして、慢性合併症や高血糖の関与などがいわれています。糖尿病に限ったことではありませんが、加齢に伴う身体活動量の低下も、サルコペニアの原因となります。

 

予防と改善方法

 サルコペニアの予防および改善方法として食事療法と運動療法が挙げられます。
 食事療法としては、充分な量のたんぱく質を摂取することが重要です。65歳以上の高齢者では、1日に体重1㎏あたり1g以上のたんぱく質を摂取することが望ましく、活動度や併存疾患によって増減することが推奨されています。ただし腎臓の機能が低下している方は、たんぱく質制限が必要となるケースもあり、主治医とよく相談して摂取量を決めるようにしましょう。
 運動療法としては、レジスタンス運動(筋肉トレーニング)が重要です。片足立ちや椅子に座って太もも上げなどの軽い運動から始めて、可能であればスクワットや腕立て伏せに強化するなど、無理なく継続できる範囲で日常生活に取り入れてみるといいでしょう。
 現在、サルコペニアに有効な治療薬はありませんが、適切な食事と運動によって予防することは十分可能です。運動療法は血糖コントロール改善にもつながります。ご自身の健康寿命を延ばすためにも、少しでも興味を持っていただけたら幸いです。

 

 

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