健康コラム

掲載日:2022年1月6日

動脈硬化について

うしおだ診療所 副所長 渡部 琢也医師

 世界保健機構(WHO)からの最近の発表によると、全世界の死因は、第一位が虚血性心疾患(心筋梗塞や急性冠症候群)、第二位が脳卒中(脳梗塞や脳出血)でした。虚血性心疾患と脳卒中は、動脈硬化や血栓形成に起因する血管病です。動脈硬化を引き起こす危険因子として、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、メタボリック症候群、喫煙などがあります。

動脈硬化の成因機序

 動脈壁は、内膜・中膜・外膜の三層構造からなります(図A)。血流と接する内膜には、血管壁のバリアかつ血流の変化を察知するセンサーといった重要な役割を担う内皮細胞があり、中膜には血管の収縮と弛緩を交互に行う平滑筋細胞があります。外膜には血管に養分を与える毛細血管や神経などがあります。

 血管内皮細胞が高血圧、糖尿病や喫煙などで障害されるのを機に、悪玉の低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールが血管内膜下に侵入し、血管壁内で発生した活性酸素によって修飾(酸化)され、酸化LDLになるところから動脈硬化は始まります(図A)。血管壁内の酸化LDLが刺激となり、血管内腔を流れている単球はその場所に引き寄せられ内皮細胞下に潜り込みます。こうして血管壁に浸入した単球はマクロファージに分化し、酸化LDLを取り込みます。これにより細胞内に脂肪滴(コレステロールエステル)が蓄積してマクロファージの泡沫化(顕微鏡にて泡状に見える)という現象が起こります。この脂質に富んだ泡沫化細胞が集積することで脂質コアが形成されます(図B)。同時に血管平滑筋細胞が中膜から内膜へはみ出し(遊走)、脂質コアを取り囲むように異常増殖することで動脈硬化病変(プラーク)がどんどん大きく形成されていくことになります(図B)。

 つまり悪玉LDLコレステロールに対処するための生体防衛反応(マクロファージによる悪玉LDLコレステロールの取り込み)が、むしろ血流を障害するという皮肉な結果となります。

 動脈硬化性疾患には、①胸痛を引き起こす狭心症、心筋梗塞、(解離性)大動脈瘤、②頭痛や意識喪失を起こす一過性脳虚血発作、脳卒中、③物忘れを引き起こす血管性認知症、④腎機能障害や高血圧を引き起こす腎血管性高血圧、⑤歩行時の下肢の痺れや痛みを引き起こす閉塞性動脈硬化症などがあります。

 血管年齢の老化を加速させると言われる動脈硬化が気になる方は、外来診療において、採血にて、LDL、中性脂肪、血糖値を測定するとともに、血圧脈波、頸動脈エコー、CT、MRIなどの検査を定期的に受けることを推奨致します。

うしおだ診療所副所長 渡部琢也

東京薬科大学 生命科学部 心血管医科学研究室 教授
昭和大学 医学部 内科学講座(糖尿病・代謝・内分泌部門)客員教授を経て2019年より現職に至る

動脈硬化、高血圧、糖尿病、虚血性心疾患、血管性認知症に関する医学英文論文120編以上、和文論文70編以上を執筆し、International Journal of Molecular SciencesやCellsなどの計20誌の国際医学雑誌の編集委員を現在も務める

8-診療ウォッチング資料イラスト

A:正常の動脈、B:動脈硬化を起こした動脈
渡部琢也著、「未来の治療に向かって‐生命医科学の挑戦」から改変