健康コラム

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鼠径ヘルニア(脱腸)って知っていますか?(前編)

汐田総合病院外科 池田裕一医師

鼠径ヘルニアとは

 「鼠径(そけい)」部とは、足の付け根の部分のことをいい、「ヘルニア」とは、体の組織が正しい位置からはみ出した状態をいいます。
 「鼠径ヘルニア」とは、本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に出てくる下腹部の病気です。一般には「脱腸」と呼ばれています。

 

鼠径ヘルニアの症状

 初期症状は、立った時とかお腹に力を入れた時に鼠径部の皮膚の下に腹膜や腸の一部などがでてきて柔らかい腫れができますが、普通は指でおさえると引っ込みます。鼠径部に何か出てくる感じがあり、それがお腹の中から腸が脱出してくるので「脱腸」と呼ばれています。次第に小腸などの臓器が出てくるので不快感や痛みを伴ってきます。腫れが急に硬くなったり、押さえても引っ込まなくなることがあり、お腹が痛くなったり吐いたりします。これをヘルニアの嵌頓(かんとん)といい、急いで手術をしなければ、命にかかわることになります。

 

鼠径ヘルニアになる原因

 鼠径部は腹圧や足の運動に耐えるために、筋肉や筋膜が重なった複雑な構造になっています。ここに鼠径管という直径が1cmぐらいのトンネルがあります。このトンネルが男性では精子を運ぶ精管や精巣に行く血管、女性では子宮を固定する靱帯の通り道となっています。このトンネルの入口やその周囲の筋肉や筋膜が弱くなり、お腹の中の組織が外に出てくることで鼠径ヘルニアが発病するわけです。男性の場合、このトンネルが太いため鼠径ヘルニアになりやすいといわれています。

 

鼠径ヘルニアの分類

①外鼠径ヘルニア
 鼠径ヘルニアの大半がこのヘルニアです。
②内鼠径ヘルニア
 中年以降の男性に多いヘルニアです。
③大腿ヘルニア
 全体的には少ないヘルニアです。女性に多く、嵌頓になりやすいため注意が必要です。

 

(次月号へ続く)

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