健康コラム

掲載日:2017年12月1日

「手術と痛み」麻酔科の役割


汐田総合病院
麻酔科 浅野慎吾医師

 「暮らしとからだ」読者の皆様には、汐田総合病院を受診され、各科の外来がどんなところかご存じの方が多いかと思います。
 当院の麻酔科には外来というものがありませんので、ご自身や身近な人が手術を受けたことがあるというのでもなければ、直接お目にかかる機会もございませんし、麻酔科とはどんなことをするところなのか、なかなかイメージしにくいかもしれません。
 「麻酔は危ないもの怖いもの」と思っておられる方もいらっしゃるかもしれません。確かに昔は大変に危険なもので、文字通り命がけの時代もありました。そこでおよそ60年以上も前、日本にも「麻酔科」という診療科ができました。
 以来、麻酔の技術は長足の進歩を遂げ、「100%絶対に」とまでは言いませんが、格段に安全・安心なものになりました。

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「痛み無く」の重要性

 今我々麻酔科医が目指すものは、安全を確保したうえで、いかに痛み無く、快適に手術を受けていただくか、そしてより良い術後の回復と手術成績に結びつけていくか、ということです。
 この「痛み無く」というのが実はことのほか重要であることが長年の研究で判ってきたのです。昔の全身麻酔は、確かに手術中は深い眠りのなかにあって記憶もないのですが、「鎮痛」の要素が少なく、痛みそのものを抑制する努力が不足していました。深い麻酔がかかっていても、外からはそれとわからなかったのですが、手術による痛みの刺激は脊髄から脳へと容赦なく侵入し、強いストレス反応を引き起こしていました。そして脳にも脊髄にも痛みの痕跡を残していたのです。
 強いストレス反応は免疫を抑制するので、術後の感染や癌の転移・再発にも悪影響を及ぼしますし、手術中の痛みの痕跡は痛覚過敏状態として術後痛を長引かせていました。

ご心配はご無用に

 しかし、ご安心ください。現代の全身麻酔には必ず強力な「鎮痛」の要素が加えられるようになっています。
 当院の麻酔科でも、硬膜外麻酔、各種神経ブロック、新しい超短時間作用性の強力な鎮痛薬等々を駆使して、手術中はもとより手術後の痛みも最小にすべく努力を重ねておりますので、もし手術室でお目にかかることが御座いましても、「麻酔は怖いもの」「手術は痛いもの」というご心配はご無用に願います。